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久留米物語

久留米物語 井上伝と久留米絣 木綿の白い斑点に疑問を抱いた13歳の少女。新柄を織りたい一心で、「加寿利」を創製。強い意志と情熱ゆえに、「男お伝」と呼ばれる。

井上伝 「地場産くるめ」には、国の重要無形文化財に指定されている久留米絣の資料館があります。同館では、久留米絣の創始者である井上伝が愛用しためがねやハサミなどの資料が展示され、約200年の歴史を振り返ることができます。
江戸後期、伝は久留米藩の城下・通外町(現・久留米市通外町)で米穀商を営む平山源蔵の娘として生まれました。当時は厳しい倹約令がありましたので、男女とも衣服類は木綿ものです。一般に農村の女性は幼い頃から機織りを学び、衣服は手織りして暮らしを助けていました。器用な伝は、8歳頃からせっせと織っていたといわれています。

 伝が13歳頃のことです。すでに白木綿や縞を織りあげては城下で売りに出し、家計の足しにしていました。その頃の機は地機でしたので、腰と腕の力がかなり必要だったといわれています。ある日、伝は着古した藍染の木綿の着物が白い斑点のような模様になっていることに気づきました。
 「こんな模様の着物がほしいわ。1本1本の糸はどうなっているのかしら」

 当時の着物は単調な紺一色や地味な縞柄がほとんどでした。木綿の藍染は何度も洗ううちに染料が抜け落ちることは誰もが知っていましたが、気に留めなかったのです。着物を解いてみた伝は、紺色の糸が所々白くなっていることが分りました。
 「紺と白のまだらの糸で織れば、新しい模様の織物ができるかもしれない」
 そこで、伝は白糸を使い、染めたくない所を別の糸で括って藍汁につけて染め、その糸を機にかけて織りました。しかし、模様はなかなか思い通りになりません。それでも諦めずに繰り返すうちに、ようやく紺地に白い斑紋が表れました。これが「久留米絣」の始まりです。人々はその模様を「霜降織」や「霰織」と呼び、評判になったといいます。その後、織物の模様が掠れて見えたことから、伝は「加寿利」と名づけて販売しました。彼女の名は領内に知れ渡り、16歳の頃には数十人の弟子が集まったとされています。」

 21歳のとき、伝は城下・原古賀町(現・久留米市本町)の井上次八に嫁ぎました。井上家は織屋でしたので、伝は弟子の指導をしながらさらに織りの技術を磨いたのでしょう。『久留米原古賀織屋おでん大極上御誂』の商標で、盛んに「お伝加寿利」を売り出しました。しかし、伝が28歳の頃、頼りにしていた夫は病気で亡くなります。3人の子どもがいた伝は途方に暮れながらも、こう決意します。
「私には機織りがある。生まれ育った通外町に戻って、織屋を始めよう」」

 伝は子どもを連れて生家の近くに移り住み、ますます機織りに励みました。次第に弟子は増え続けて、40歳の頃には弟子が千人にも及び、そのうち400人が各地で開業したといいます。70歳頃になっても、頼まれると現在の大善寺町などにわざわざ出かけて教え、通算すると弟子の数は数千人にもなりました。こうして筑後の村々では、女性のいるところ、トンカラリンという機織りの音が聞こえない家はないといわれたのです。」

 明治初頭、伝は82歳で亡くなりました。その後、多くの人たちが織機の改良などを行い、「久留米絣」として全国に名を知られるようになりました。後に、孫娘や直弟子だった女性たちは伝についてこう語っています。
 『言葉少なく、沈着で、あくまで目的を貫く意志と情熱に、男お伝という人もあった』久留米絣のもつ木綿の素朴さと冴えた紺白。手で触れると、機と向き合い力強く生き抜いた女性の息遣いを感じます。」

写真(井上伝肖像画・久留米絣・地場産くるめ・久留米絣資料館)
主な参考資料=『久留米絣200年のあゆみ』『先人の面影・久留米人物誌』他

取材、執筆 オフィスケイ代表 田中 敬子

「絣・百花譜 上から亀甲/あられ/東(あずま)/ラヂオ/燕(つばめ)/電車」
地場産くるめ・久留米絣資料館

久留米絣や籃胎漆器、地酒、久留米ラーメン、久留米の銘菓など、筑後地域の伝統工芸品や特産品が揃うお土産コーナーをはじめ、食事ができる会場(要予約)や、総合展示場、研修室、会議室が完備されており、展示会・イベント・会議・研修等に利用できる。 また、久留米絣資料館では、久留米絣の歴史や製造工程、戦前に織られた作品、久留米絣の創始者である井上伝愛用のめがねなど、貴重な資料を展示しており、久留米絣のほか、久留米地方の工芸品の製造工程のビデオ観賞や、希望者は久留米絣手織りの体験もできる。

  • 地場産くるめ

    地場産くるめ

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    久留米絣資料館

【営業時間】
久留米絣資料館・即売場 10:00~17:00
会議室・研修室 9:00~22:00
【休館日】
年末年始
【住所】
久留米市東合川5-8-5
【アクセス】
・西鉄バス(22)番利用「地場産業センター入口」下車、徒歩約3分、
  または(23)番利用「千歳市民センター入口」下車、徒歩約5分
・九州自動車道「久留米IC」よりすぐ
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【リンク】地場産くるめ
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