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久留米物語

石橋正二郎とブリヂストン

久留米市は、「ブリヂストン発祥の地」です。長門石橋のあたりから筑後川の河畔を見ると、株式会社ブリヂストン久留米工場(京町)が見えます。久留米工場は国内最初のタイヤ工場として、1931年3月に操業を開始しました。創業者の石橋正二郎がタイヤの生産を決断したのは、昭和の始めです。

『昭和3年(1928)、地下足袋やゴム靴の大量生産はすでに緒についたが、将来のゴム工業として大きくのびるのは何といっても自動車タイヤであるから、私は自分の手でこれを国産化したいと決心した』

正二郎はこの頃、39歳でした。すでに日本足袋会社を設立し、地下足袋とゴム靴の量産体制をつくりだし、時の大蔵大臣に賞賛されるような成功を収めていました。折しも、アメリカの経済恐慌に端を発して日本経済は深刻な不況が続いていましたので、新しい事業をおこそうと考える情勢ではなかったといいます。タイヤ製造の技術が難しかったこともあり、社員や知人のほとんどが反対しましたが、正二郎の決断には堅いものがありました。

『当時、わが国の自動車保有台数はわずかに5、6万台といわれ、そのタイヤは殆んどが欧米からの輸入品であったから、私は国産タイヤを安価に供給することは、わが国の自動車の発達に貢献するものと思った』

正二郎は17歳で家業の仕立物屋を継いだときから、「世のためになることをしたい」と願っていました。実は、久留米商業学校の在学中、正二郎は上級学校への進学を希望していたのです。日本は日露戦争で戦勝国となり、青年たちの意気が盛んな頃でした。正二郎も海外に目を向け、「世界に雄飛しよう」という夢を抱き、家業については3つ年上の兄が継げばよいと考えたのでした。ところが、心臓病を患っていた父は、「兄弟2人で家業を継いでくれ」と許しませんでした。進学を断念して正二郎は決意します。

『私は、一生をかけて実業をやる決心をした以上は、何としても全国的に発展するような事業で、世のためにもなることをしたいと夢を描いていた』

日本足袋の成功のさなか、正二郎は「日本人の資本で、日本人の技術によるタイヤの国産化」という前人未踏の事業に着手します。まず、九州大学教授で、ゴム研究の第一人者である君島武男博士に協力を求め、タイヤ製造に必要な機械をアメリカに発注しました。その際、正二郎は、将来海外に輸出するときのことを考えて、商標名を「BRIDGESTONE」と英語に決めています。

さて、日本足袋会社の仮工場で約20名の従業員が試作を始めました。タイヤ製造の経験者はいませんので、輸入機械に添えてあった10枚余りの仕様書が頼りだったといいます。そして昭和5年(1930)、第一号のタイヤが誕生しました。翌年、ブリッヂストンタイヤ株式会社(現・株式会社ブリヂストン)が設立され、後に、自動車産業の成長とともに日本最大のタイヤ会社となりました。正二郎は後年、自分の歩みについてこう書いています。

『零細な家業からスタートし、新しい需要の起るような独創的なものに眼をつけ人に先んじ、人の真似をしたのではない。何事を為すにも真心をもって物事の本末と緩急を正しく判断し、あくまで情熱を傾け、忍耐強く努力したのであって、運がよいとか先見の明があるとかいわれるけれども、世の中のために尽すという誠心誠意こそ真理だと思っている』

今日、ブリヂストンは名実ともに世界のトップメーカーの地位を築いています。正二郎が描いた「世界に雄飛しよう」という夢は、製品をもって実現したのです。

写真=(ブリヂストン久留米工場・ブリヂストン通りのケヤキ並木・JR久留米駅前「世界最大のタイヤモニュメント」) 主な参考資料=『私の歩み』・『回想記』『我が人生の回想』・『石橋正二郎』・『ブリヂストン創業者石橋正二郎物語~世の人々の楽しみと幸福の為に~』他

取材、執筆 オフィスケイ代表 田中 敬子

JR久留米駅前「世界最大のタイヤモニュメント
ブリヂストン発祥の地・久留米
  • ブリヂストン久留米工場
    ブリヂストン久留米工場

    1931年3月の創業以来の歴史をもち、ブリヂストンのマザープラントとしてブリヂストングループを支える拠点工場です。2010年にリニューアルされた第1工場では、一般見学会も行われ、創業者石橋正二郎が使用していた社長室やブリヂストンの歴史、社会貢献活動などが紹介されています。ブリヂストン発祥の地である久留米工場の見学を通して、創業以来長く受け継がれてきた「ブリヂストンらしさ」にぜひ触れてください。なお、工場見学は不定期です。詳しくはリンク「HP」でご確認ください。

    住所久留米市京町105

    アクセスJR鹿児島本線「久留米駅」まちなか口より徒歩約3分

    リンクブリヂストン久留米工場

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  • ブリヂストン通り
    ブリヂストン通り

    JR交番前交差点から続く約1.2㎞のケヤキ並木。ブリヂストン創立25周年記念事業の一環として、1955年に同社より市に寄贈されたもので、通りの両側には215本のケヤキが植えられています。新緑や紅葉など、四季折々に多彩な表情を見せる美しい並木道には、石橋氏の功績を示すモニュメントや休憩エリアなどが設置されているほか、お洒落なカフェやショップが立ち並んでいます。2003年には「ブリヂストン通りのケヤキ並木」として、「第23回緑の都市賞」を受賞しました。

    アクセスJR鹿児島本線「久留米駅」まちなか口よりすぐ

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