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久留米物語

久留米つばきとシーボルト生産量でも、新品種開発の豊富さでも、全国有数の久留米つばき。
シーボルトが、「正義」をヨーロッパに広めた。

早春、耳納北麓の草野町にある「久留米つばき園」では、久留米つばきの正義をはじめ白玉宝珠(しらたまほうしゅ)、小夜侘助(さよわびすけ)、久留米源氏(くるめげんじ)などが次々と満開を迎え、約500品種、2000株のツバキ類が訪れる人々を楽しませています。

耳納連山の北麓は、江戸時代から植木や苗木の生産が盛んな地域でした。その中で、今日、久留米つばきは生産量でも、新品種開発の豊富さでも全国有数です。

久留米つばきには、海外で「ドンケラリー」として知られているヤブツバキがあります。久留米地方を中心に江戸時代から普及している「正義(まさよし)」のことで、濃い紅色の花弁に大小の白斑が入った美しい花を咲かせます。日本から持ち出したのは、ドイツの医師で博物学者のシーボルトでした。

江戸時代後期、長崎出島のオランダ商館医であった彼には、日本の博物とその情報の収集という特別な任務がありました。文政6年(1823)8月、船で初めて長崎の港に入ったシーボルトは、こう日記に書いています。

「寺社の林苑の何という崇高さ!火山の頂きに映える緑の美しさ!丘の斜面の常緑の樫、杉、月桂樹の何とうっそうと茂っていることか!どのような人々が勤勉に働いて、こんなに自然を手なずけたのだろうか!まさに賞讃に値する」

ヨーロッパにはない常緑樹林に目を奪われたのです。そして、常緑のツバキ科の植物にも注目しました。ツバキがヨーロッパに初めて紹介されたのは、18世紀の頃です。中頃には各国で栽培され、育種も行われていました。

日本に滞在したおよそ7年間、シーボルトは長崎やその近郊などで実際に植物を採集したり栽培したりして研究しました。乾燥標本の作成、鉢植えで保存するなどして、『ついには、日本の最も美しく、珍しい植物を種類にして485、数にして約1200も集めることに成功した』と書いています。ヨーロッパの庭園で栽培するためでした。

文政12年(1829)12月、シーボルトはオランダ船ジャワ号に、植物と動物の標本、生きた植物のコレクションを積み込み、日本を離れました。その中に「正義」が含まれていたのです。航海中、多数の植物が枯れましたが、翌年7月にアントワープ港に到着し「正義」を含むツバキの接ぎ木苗5株は枯死寸前で荷揚げされました。「正義」は植物園で養生され、息を吹き返します。そして、植物園園長の名にちなみ「ドンケラリー」と命名されました。

ドンケラリーはシーボルトらの尽力で欧米に広まり、その大輪の華麗な花柄が人気を呼んでヤブツバキを代表する名花として愛されています。

シーボルトは、著書の中で、ツバキについてこう書いています。

『ツバキは愛好家にとっても商業園芸家にとっても、冷温室の最大の宝物となっており、しかもそれが冬のバラであるが故に、ますますその栄誉に値するものとなっている。ツバキはその花の美しい様子によって、この季節の他の植物の緑の単調さを際立たせているのである』

戦後、「ドンケラリー」は日本に里帰りしました。現在、草野町には、樹齢300年などの「正義」の古木が6株あります。そのいずれかが「ドンケラリー」の母株といわれています。

主な参考文献=「日本ツバキ・サザンカ名鑑」・「花の男シーボルト」・「日本植物誌」・「久留米つばき研究会20周年記念誌」他

取材、執筆 オフィスケイ代表 田中 敬子

上から「正義」「久留米源氏」「小夜侘助」「白玉宝珠」「王昭君」
国際ツバキ協会で認定された2つの「国際優秀つばき園」

全国有数のツバキ苗木生産地の久留米市。2010年に久留米市で開催された国際ツバキ会議で、「国際優秀つばき園」に認定された「久留米つばき園」と「石橋文化センターつばき園」では、ツバキの魅力を存分に観賞することが出来ます。 また、毎年3月、この世界に認められた2つのつばき園を主会場とした「久留米つばきフェア」が開催されます。

  • 久留米つばき園

    久留米つばき園

    「久留米つばき園」には、九州大学農学研究院により蒐集された日本各地に自生するヤブツバキや、東京農工大学より提供されたツバキ属原種、貴重な園芸品種や原種ツバキなど、全国でも有数の多品種、約500品種・2000本のツバキ類が植栽されています。 また、園内の「つつじゾーン」には、約200品種500本のツツジが植栽されている他、「しゃくなげゾーン」、「かえでゾーン」、「うめ園ゾーン」とゾーニングされており、四季を通じて花とみどりを楽しめる憩いの空間となっています。

  • 石橋文化センターつばき園

    石橋文化センターつばき園

    石橋文化センターのつばき園は、「久留米のつばきゾーン」「日本のつばきゾーン」「世界のつばきゾーン」「香りのつばきゾーン」「園芸品種実生のつばきゾーン」と5つのテーマごとにゾーニングされており、久留米が誇る久留米産のツバキをはじめ、注目を浴びている香りのするツバキ、世界で生み出された華麗なツバキなど、約260品種1500本のツバキが植栽されています。

  • 【休園日】なし
    【入園料】無料
    【住所】久留米市草野町草野546-1
    【アクセス】
    ・JR久大本線「筑後草野駅」より徒歩18分
    ・西鉄バス25番利用、「草野コミュニティセンター前」バス停より徒歩8分
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    【リンク】久留米つばき園
  • 【開園時間】9:00~17:00
    【休園日】月曜日(祝日は開館)、年末年始
    【入園料】無料
    【住所】久留米市野中町1015
    【アクセス】
    ・JR鹿児島本線「久留米駅」より西鉄バス(1・7・8・9・20・22・25)番利用「文化センター前」バス停下車すぐ
    ・西鉄天神大牟田線「久留米駅」より西鉄バス利用約5分、または徒歩約10分
    ・九州自動車道「久留米IC」から約10分
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    【リンク】石橋文化センターつばき園
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